前鬼・後鬼

修験道の開祖として知られる役小角(役行者)に仕える夫婦の鬼。

善童鬼と妙童鬼とも呼ばれる。

役小角の式神、または弟子の義覚と義玄であるともされる。

赤鬼の前鬼は鉄斧で役小角の前を歩いて道を切り開き、青鬼の後鬼は霊力のある理水が入った水瓶を持つ。

大和国生駒山にて悪行を働いていた前鬼と後鬼は、不動明王の法を用いた役小角に捕縛され従うようになった。

この際に前鬼義覚と後鬼義玄という名を与えたといわれる。

2匹の鬼が捕らえられたこの山は鬼取山、または改心の証に髪を切ったことにちなんで髪切山とも呼ばれるようになったという。

この夫婦鬼の間には、五鬼、五坊と呼ばれる五人の子がいた。

彼らは吉野下北山に修験者のための宿坊を開き、その子孫たちの血は今も受け継がれている。

また、妙薬「陀羅尼助」は役小角が洞川にて製法を後鬼に教え、繫栄した子孫によって広く伝えられたといわれる。

オシリス

エジプト神話の冥界の神。

大地の神ゲブと天空の女神ヌトの息子で、隼の頭を持つ天空神ホルスの父。

信仰初期は、自然を司る植物の成育サイクルを神格化した存在とされたが、後に死者の国の神となった。

通常はミイラの包帯に包まれた鬚のある男性として、王の象徴である牧杖と殻竿を持つ姿で描かれる。

オシリスが象徴するのは、人間の幸福を脅かす苛烈な気象条件、さらに自然界の再生力などである。

 

生まれたとき、オシリスは「宇宙の主」を賞揚され、美しい神へと育っていった。

父親が王位を退くと、オシリスは継いでエジプトの王をなり、妹のイシスを王妃にした。

オシリスはパンとワインの製法を人間に教え、最初の神殿建築、神々の像の製作を監督した。さらに町をいくつも建設し、公正で正義に適った法を定めた。

そしてオシリスは長い旅へと出発し、訪れた国にも文明を授けていった。

オシリスがエジプトに戻ってくると、王を讃える様々の祝宴や祭りが催された。

しかし弟のセトは兄の人気に嫉妬し、陰謀を企みオシリスを殺害してしまう。

それを知った妹であり妻のイシスは遺骸の捜索を始めた。

セトに邪魔をされても諦めず、イシスは魔法によってオシリスを生き返らせた。

遺骸保存の措置が行われたのはこれが最初であった。

だが、蘇ったオシリスは弟への失望から、王位をホルスへ譲り、地上の世界から退いた。その後は冥界の宮廷で死者たちの裁きを司る王となった。

牛頭天王

京都祇園の八坂神社の祭神。

日本における神仏習合の神であり、神道においては素戔嗚尊、仏教では薬師如来の本地垂迹であるとされる。

陰陽五行思想を起源とする陰陽道では、吉祥天の王舎城大王・商貴帝と同一視された。

牛頭天王は疫病を流行らせる行疫神として畏れられるが、逆に祀れば疫病を防いでくれるとも考えられた。

『祇園牛頭天王御縁起』によれば身長7尺5寸、3尺の牛の頭、3尺の赤い角をもつ、恐ろしい姿であるとされる。

また、インドの祇園精舎の守護神である武塔天神とも同一視され、鎌倉時代中期の『釈日本記』に引用された『備後国風土記』で蘇民将来説話に現れる。

牛頭天王は旅の途中に民家に立ち寄り一宿一晩を願い出た。

しかし裕福な巨担将来は断り、兄の蘇民将来は貧しいながらに歓待した。

そして再び蘇民将来の元を訪ねた牛頭天王は感謝し、娘に茅の輪を授け、その子孫が疫病を免れることを約束したという。

 

アプサラス

インドのヒンドゥー神話に登場する天界の精の総称。

元々は水の精であったが後に森の精と考えられた。

神々を喜ばす魅惑的で美しい踊り手であり、賭け事を好むという。

姿を自在に変えることができるとされ、無花果やバナナの木に住むともいわれる。

アプサラスは神々とアスラによる乳海撹拌の際に、海中から誕生したとされ、どちらのものにもならなかったことから「官能の娘たち」と呼ばれた。

 

半神族のガンダルヴァの配偶者とされるが、人間の求愛に応え結婚することもあるという。

プルーラヴァス王と結婚したウルヴァシー、ドゥシュヤンタ王の妻となったシャクンタラーなどがよく知られている。

ペネム

旧約聖書偽典『第一エノク書』に記される神から離反した天使集団グリゴリの一人。

ペネメ、ペネムエとも呼ばれる。

人間の子供に甘さと苦さを示し、煤を混ぜた水と紙で文字を書くことを教えた。また知恵の秘密を伝えたのもペネムである。

大罪を犯す前のペネムは子供を守護する存在だったとされる。

 

アメリカの詩人にして天使学著述家グスタフ・ダヴィットソンによれば、ペネムは人間の愚かさ癒す天使であるという。

 

ウアジェト

エジプト神話の下エジプトを守護する女神。

名は緑と同義のパピルスを示す古語に由来する。

コブラの姿、あるいはコブラの頭か雌ライオンの頭を持つ女性として描かれる。

神聖動物はコブラ、雌ライオン、エジプトマングースとされる。

下エジプトと赤冠の後見の女神であるウアジェトは、王権と密接な関係にある。

ファラオの称号に、「二人の貴婦人」という名に先立ってネクベトと共にこの女神が登場する。

ウアジェトは「二つの国を開くもの」であり、上エジプトのネクベト同様、下エジプトで「二つの国の女主人」とみなされた。

 

癒し・修復・再生・魔除けを象徴するシンボルである「ウアジェトの目」は「ホルスの燃えるような目」であり、「ラーの目」である。

ウアジェトの主要な聖域は、デルタ地方西部も第6ノモスにある都市ブト(ペル=ウアジェト)にあった。

また、メンフィスのネクロポリス、キプロスのアフロディトポリス、第2ノモスの中心都市レトポリスでも崇拝されていたとされる。

セーレ

地獄の強大な君主にして悪魔の軍団二六を統率する長。

セアル、セイルとも呼ばれ、有翼の馬に乗る長髪の美男子の姿で現れる。

瞬く間に大量のものを運ぶことができ、窃盗に関する知識に長けている。

性格は優和で、招喚師が望めばあらゆる願いを喜んで叶えてくれるという。

 

十七世紀の魔術書『レメゲトン』の第一部「ゴエティア」に記されているソロモン王七十二柱の魔人の一人で、序列七〇番目に数えられている。

東方を司る王アマイモンの配下とされる。